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「アスコフィラム・ノドサム」の話

「アスコフィラム・ノドサム」の話

タイトルを見て、「アスコフィラム・ノドサム」って何?と思った方は多いと思います。「エロイム・エッサイム」のような呪文ではありません。Ascophyllum nodosumは、北大西洋の岩だらけの海岸線沿いに生息する大型の冷水性海藻で、エッグラック、ロックウィード、ノルウェージャンケルプなどの一般名で知られています。

長く丈夫な葉と、茎沿いに卵型の空気のポケットがあり、潮の満ち引きの中で少しでも多くの日光を受け取るために浮かぶ役目を果たします。

このアスコフィラム・ノドサムは、主に「植物のバイオスティミュラント(生理活性資材)」と「犬猫のデンタルケア(口臭・歯石予防)」の2つの分野で科学的に研究され使用されています。

植物系での使用のお話はさておき、犬猫のデンタルケアでは、アスコフィラム・ノドサムを細かい粉末に加工して使用します。

■作用機序

アスコフィラムがユニークなのは、歯磨き粉のように「物理的に歯の表面を擦る(局所作用)」のではなく、食べて体内に吸収されてから効く「全身性(システム作用)」のメカニズムを持っている点です。

【経口摂取】アスコフィラムを食べる

  │

【消化・吸収】腸管から有効成分(フロロタンニン、硫酸多糖類)が血液へ

  │

【分泌】唾液腺を介して、有効成分やその代謝物が「唾液」中に分泌される

  │

【口腔内作用】

  ├─ 抗菌・バイオフィルム阻害 ─ 歯周病菌(P.gingivalis等)の定着・増殖を防ぐ

  └─ 唾液の化学組成変化 ──── プラーク(歯垢)の石灰化(歯石化)をブロック

① 唾液組成の改質

経口摂取されたアスコフィラムの活性成分(または代謝物)は、消化管から吸収されたのち血流に乗り、唾液腺から唾液中に分泌されます(犬を用いたサリバ・メタボロミクス研究で実証済み)。これにより、口腔内がつねに海藻由来の機能性成分を含んだ唾液で満たされる状態になります。

② 抗菌作用とバイオフィルム(歯垢)の形成阻害

口腔内の健康を害する主因は、細菌が作る粘着性のバリア「バイオフィルム(歯垢)」です。

• アスコフィラムに特異的なポリフェノールであるフロロタンニン(Phlorotannins)や硫酸多糖類は、歯周病の主要原因菌(Porphyromonas gingivalis など)の細胞膜に作用し、その増殖を抑制します。

• 細菌が歯の表面(ペリクル層)へ初期付着するのを化学的に阻害し、バイオフィルムの構築を防ぐため、結果として歯垢が定着しにくくなります。

③ 歯石化のプロセス抑制

歯垢が放置されると、唾液中のカルシウムやリン酸と結合して、硬い「歯石(リン酸カルシウムの結晶)」へと変化します。

• アスコフィラムの成分を含んだ唾液は、このカルシウムイオンとプラークの結合(石灰化プロセス)を阻害します。

• すでに存在している歯石に対しても、その結晶構造を脆くする(多孔質化させる)作用が示唆されており、日常の咀嚼や軽いブラッシングで剥がれ落ちやすくなります。

■臨床試験・論文

アスコフィラム・ノドサムのデンタルケア効果については、犬や猫、人間の臨床試験(二重盲検比較試験など)で具体的な減少率データが実証され、論文発表されています。

このグラフは研究データを可視化したもので、アスコフィラム・ノドサムを摂取した犬において、90日間にわたり歯垢、歯石、口臭、歯茎からの出血がどのように減少したかを示しており、ペットのデンタルケアにおける同成分の有効性を示しています。

参照:

¹ Effects of Ascophyllum nodosum on the Oral Health of Dogs: A Double-Blind, Randomized, Placebo-Controlled Single-Center Study, 2018 https://www.frontiersin.org/journals/veterinary-science/articles/10.3389/fvets.2018.00168/full

² Influence of Dietary Supplementation With a Powder Containing A.N. ProDen™ Ascophyllum nodosum on Dog Saliva Metabolome, 2021 https://www.frontiersin.org/journals/veterinary-science/articles/10.3389/fvets.2021.681951/full

³ Ascophyllum nodosum as a nutrient supporting oral health in dogs and cats: a review, 2023
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37727971/

■特徴

臨床試験の結果から、アスコフィラム・ノドサムの「効き方」には2つの特徴があることが分かっています。

1. 即効性ではなく、30日前後から差が出る

食べてから成分が血液に乗り、唾液の質を変えるまでに一定の時間がかかります。試験データでも、投与14日目より30日〜90日目のほうが減少率が大きく向上します。

2. 「ブラッシング」や「咀嚼」との相乗効果がある

アスコフィラムの成分によって歯石の結晶構造が脆く(多孔質に)なるため、おもちゃを噛んだり、軽い歯磨き(ブラッシング)を組み合わせたりすることで、驚くほど簡単にポロリと歯石が剥がれ落ちるようになります。

これらの臨床データに基づき、アスコフィラム・ノドサムを主成分とする特定の製品(例:ProDen PlaqueOff)は、アメリカの米国獣医口腔衛生協議会(VOHC)から「歯垢・歯石の沈着を抑制する効果がある」として正式に承認(Seal of Acceptance)を受けています。

■注意事項

アスコフィラム・ノドサムの長期摂取における毒性や有害事象については、「適切な給与量を守っていれば基本的には安全」ですが、懸念点・リスクが3つ指摘されています。

1. ヨウ素過剰による甲状腺障害/潜在的に甲状腺疾患を持っている個体では注意

2. 重金属(ヒ素など)の蓄積リスク/品質管理の行き届いたものを選ぶ

3. 消化器系の一時的な不調(軟便・下痢)/豊富な可溶性食物繊維による

甲状腺機能亢進症の猫ちゃんや甲状腺機能低下症のワンちゃんは使用を避けた方が無難かもしれません。

アスコフィラム・ノドサムについて、分かっていただけたでしょうか。

日本では以前からプロデン・デンタルケアという名前で日本全薬工業から犬猫用粉末が販売されていましたが、現在は株式会社ライトハウスからプロデン・デンタルバイツという名前で粉末とキブルがそれぞれ犬用・猫用に販売されているようです。

最近、ビルバック社が販売するペットフード、VETERINARY HPM®がリニューアルされ、アスコフィラム・ノドサムが配合されました。

必ず与えるフードにアスコフィラム・ノドサムが配合されているのですから、手間いらずで、嗜好性の問題もうまく解決されているようです。

ブラッシングができていない動物たちにはデンタルケアの第1歩として、できている動物たちにもプラスアルファのデンタルケアとして、検討してみてはいかがでしょうか。デンタルケアにはこれでおしまいというゴールはありません。ウンチをすればおしりを拭くのが当たり前ように、ものを食べればデンタルケアが必要です。

「アスコフィラム・ノドサム~」

「エロイム・エッサイム~」

「アスコフィラム・ノドサム~」

「エロイム・エッサイム~」

デンタルケアを欠かさないようにする「おまじない」なのかもしれません^^

(文責 吉内)


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